2021年2月1日

フランツ・カフカカフカ寓話集』

ある学会報告:かつて猿だった人間の話。猿だった頃、人間に捕まって檻に入れられる。猿は自由は求めていないが、出口は欲しがっている。そこで猿は人間になることを目指し、やがて人間になる。人間に自由はないが、それでも満足しているという。そんな話。
「自由」と「出口」は似ているようで異なる原因であることを、この寓話ははっきりと示している。そして人間は「自由」と言う概念について政治や哲学の観点からたっぷりと語り尽くしてきた。それと比べると「出口」と言う概念について真剣に語った事例はかなり少ないと思う。これは人間がいかに「自由」を素晴らしいものだと思い込んでいることの表れであり、そんな考えが猿にとっては愚かに見えると言うことなのかもしれない。何よりもこの短編の凄いところは、「出口」という、普段は見過ごされている概念をはっきりと捉えて、それを明確に表し示したことである。