2021年1月13日

フランツ・カフカカフカ寓話集』

ショートショート集。最初の3話まで読んだ。

・皇帝の使者

あまりにもシュールな話。おそらく、こーゆー話だと思う。世の中は制度上こうなっているはずという建前はあるのだが、現実にはそもそも制度が成り立っていない。しかし人々は世の中の制度が建前上でしか成り立っていないことを、死ぬまで知る事は無い、という話なのかなぁと思った。

・ジャッカルとアラビア人

アラビア人を憎むジャッカルと、ジャッカルをペット扱いするアラビア人。その間に立つヨーロッパ人。結局ヨーロッパ人はどちらの立場についたのかが明確にされないまま話が終わっているところが良い。

・ある学会報告

かつて猿だった人間が、いかにして自分が猿から人間になったのかについて語るという話。ある日、猿は人間につかまって檻に閉じ込められる。猿はこの状況から脱出したいが、自由になりたいわけではないと言っている。最初は猿が何を考えてこう言っているのかわからなかったが、猿が人間になったことによって、この意味が初めて理解できた。人間になることによって猿は閉じ込められていたという状況から脱出できたが、人間として生きなければならないので、自由とは程遠い。しかし猿は、自由が素晴らしいものであるとはこれっぽっちも思っていない。むしろ自由であることをやたら賞賛する人間のことを小馬鹿にしている。象徴的に言えば、猿は檻の外に出て状況を変えるのではなく、自分自身を人間に変えることによって状況を変えたのだ。つまり猿は今でも檻の中。人間社会と言う檻の中、ということだろう。檻の外に出てもろくな事は無いということを、猿は理解しているのだろう。

 

SFマガジン 2021年2月号

届木ウカ『貴女が私を人間にしてくれた』

生まれた時から「24時間アイドル」として活躍奮闘している3姉妹の話。このアイドル活動には黒い裏がある。

個人的には、この話にはあまり乗れなかった。誰か加害者で誰が被害者であるかははっきりしているのだが、どうも被害者に対して同情心や共感がわかない。「結局、金魚はおとなしく金魚鉢の中にいたほうが良いのではないか」という程度の感想しか出てこない。